
IBM の「未来を考える仕事」に、社外人材の視点が必要な理由
110年以上続くグローバル企業、IBM。その歴史は日本でも古く、創業は1937年までさかのぼります。以来、日本IBM では、時代の変化に合わせて事業を常に進化させ、テクノロジー業界で変わらぬ存在感を発揮し続けてきました。
そんな同社の取り組みを象徴する組織の1つ、IBM Future Design Lab. でチーフプロデューサーを務めるのが、テレビ業界出身の岸本拓磨さんです。「新しい価値は、異なる専門性が交わることで生まれる」と語る岸本さんに、社外との協業を重視する理由や、これからの時代に求められるチームのあり方を聞きました。

テクノロジー × 体験デザインで、企業の未来を描く
― まずは IBM Future Design Lab.の取り組みと岸本さんの役割を教えてください。
岸本:IBM Future Design Lab.は、未来の事業のあり方をお客さまと一緒に考え、その実現を支援する組織です。新規事業や企業変革プロジェクトでは、「5年後、10年後にどんな姿を目指すのか」という議論がよく行われますが、人によって思い描くイメージはさまざまです。
その未来像を映像やグラフィックで見える形にして、関係者の共通認識を作るのが、私がリーダーを務める Future Design & Creative チームの役割です。具体的には、「デジタルの進化によって10年後のサービスはどう変わるのか」といったビジョンを映像化し、株主総会や経営計画発表会などで活用いただいています。
― 制作を進めるうえで、どんなことを重視しているのでしょうか。
岸本:まずは圧倒的なおもしろさですね。コンテンツが溢れる今、「こういう未来を体験してみたい」と思わせるような強い魅力がなければ、人の心は動きません。
私自身、「新しい技術をどうおもしろい体験に変えるか」をずっと考えてきました。IBM に入社する前はテレビ業界に約20年いたのですが、当時からその時々の新技術と番組を掛け合わせたコンテンツを企画してきたんです。たとえば、スマートフォンに1万円をかざすと1,000万円に見える AR アプリを作ったり、LINE と連動してキャラクターと疑似会話できる仕組みを作ったり。振り返ると、ずっと「ニューテクノロジー × エクスペリエンスデザイン」をやってきたのだと思います。
ただ、IBM で扱うのは企業や社会の未来です。おもしろさだけでなく、その未来が本当に実現できるのかまで考える必要があります。IBM には AI や量子コンピュータなどを研究する組織があり、最先端技術がいつ、どの段階で実用化されるかの知見がある。だからこそ「この技術なら10年後には実現できる」「それはまだ難しい」といった技術的な裏付けを持って構想できます。
さらに、コンサルタントやデザイナーと連携し、必要に応じて社外のクリエイターとも協業しています。そうした専門性の掛け合わせによって、人をワクワクさせるだけでなく、地に足の着いた未来を描くことにこだわっています。

外部の視点を取り入れなければ、「革命」は起こらない
― IBM には多くの専門家がいると思いますが、社外との協業も多いのでしょうか。
岸本:IBM だけではできないことのほうが多いので、プロジェクトごとに必要な外部エキスパートと組んでいます。そもそも、外部の視点を積極的に取り入れないと「革命」は起こらないと思うんです。
未来を考える仕事だからこそ、自分たちの常識だけで完結してはいけないなと。外から新しい視点が入ることで初めて、生まれる発想や変化もあると思うんです。特に若いクリエイターのアイデアやスピード感には刺激を受けることも多いですね。
― チームを組む際は、どのようなことを意識していますか?
岸本:せっかく一緒に仕事をするなら、立場を超えて皆が楽しく取り組める状態を作りたいですね。だから何があっても、ネガティブに捉えないようにしています。
たとえば予算が厳しくてできることが限られても、その条件内で何ができるだろうと考える。「どうせやるならおもしろいものを作りたい」という気持ちは、プロジェクトに関わる人なら少なからず持っていると思うんです。一緒にアイデアを出し合おうと声をかけると、「ここに仕掛けを入れたらどうですか?」といった意見が自然と出てくる。そうした化学反応が起こるチーム作りを、いつも意識しています。
― 今日は同じチームの荒木さんにも同席されています。メンバーの立場から見て、チームの雰囲気はいかがですか?
荒木:岸本さん本人がいちばん楽しんでいることが伝わってくるので、自然と同志が集まっている印象ですね。私もそのうちの1人ですが、社内外を問わず、同じ熱量でおもしろがれる人が集まることで、プロジェクトが前に進んでいく感覚があります。

左:荒木さん 右:岸本さん
「目に光が宿っている人」と一緒に働きたい
― 岸本さんが「一緒に働きたい」「協業したい」と思うのは、どんな人ですか?
岸本:目に光が宿っている人ですね。一緒に仕事をしてきた人たちを振り返ると、みんな目がキラキラしているんです。
そういう人と話をすると、「それおもしろそうですね」と目を輝かせて自然に乗ってきてくれる。話ながら目にポッと火が宿るというか、好奇心や熱量を持っていることが伝わってくるんです。
一方で、人ってつまらないとか、後ろめたさみたいなのを感じると、目から光が消えていくじゃないですか(笑)。だから肩書きや経歴よりも、その人が何にワクワクするのかが気になりますね。
― そう思える人に出会うために、意識していることはありますか。
岸本:とにかく人に会うこと。人が人と出会う以上に進化する方法はないと思っています。
実際、おもしろいプロジェクトや新しい挑戦って、だいたい人との出会いから始まるんです。だから「ちょっと話を聞いてほしい」と声をかけられたらできる限り会いますし、その逆もあります。
プロジェクトでも、メンバーとはなるべく直接顔を見て話すよう意識しています。そうすると「この人はこういう場面で力を発揮できそう」というのが見えてくる。それがわかるとその人が生きる場面を作れるので、チームとしての動きもよくなります。

社内で完結せず、ニュートラルな環境で未来を企てる
― 最後に、これからどんなチームを作っていきたいと考えていますか。
岸本:一言で言うと「愉快でおもしろい理想工場」ですね。
ソニー創業者の井深さんが設立趣意書で掲げた「自由闊達にして愉快なる理想工場」の言葉を借りています。自由な環境のなかで人が能力を思う存分発揮できれば、働くこと自体が愉快で面白くなる、そんな場所を作りたいですね。
― チームメンバーの荒木さんはいかがですか?
荒木:まさに、私が岸本さんのチームに入った決め手は「ともに企てましょう」という言葉だったんです。立場や役割に縛られず、いろんな楽しいことを一緒に仕掛けていけそうだなと。
岸本:企てるのが生業、と書いて企業ですからね。企てる側に回れるのは貴重なことだし、もしその環境にいるなら最大限に活かさないともったいない。
その意味で、IBM の環境はすごく恵まれています。IBM のモットーに「THINK」という言葉があり、「世の中を良くするために何が最適か」を考える文化が根付いているんです。だから私たちの組織も、自社のソリューションや社内の知見だけで完結しようとは考えません。
必要であれば自社開発の生成 AI だけでなく、ChatGPT や Claude などの導入も提案しますし、社外のエキスパートと組むこともあります。「お客さまにとって何がベストか」という視点でニュートラルに動ける環境があるのも、IBMらしさだと思います。
だからこそ、これからもさまざまな専門性を持った人たちと組んで、新しい未来を企てていきたいですね。

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Writer / Shinobu Takayama
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Editor / Yuna Park
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