
「PR は社会を主語に」Sollective ギルドメンバー登壇レポート【NEXs Tokyo】
2025年5月に生まれた「Sollective ギルド」。これは、確かな実績と取引先からの信頼を持つ Sollective 認定プロたちが力を合わせ、フリーランスを取り巻く構造の変革を目指す共同体です。
ギルドでは、各メンバーが行動指針「ギルドメンバーの宣言」にコミットしています。その1つが「知見を共有する」「積極的に発信する」で、そこには仲間や企業、そして社会全体に知を循環させることで、フリーランスの地位向上につなげたい意志が込められています。
今回はギルドの取り組みの一環として、Sollective 認定プロの黒崎淳友さんが、東京都のイノベーション施設 NEXs Tokyo のスタートアップ向けイベント「NEXs Grow Up!」に登壇。「プロから学ぶ!PR の考え方と活用方法」をテーマに、惜しみなく知見を共有した黒崎さんの姿勢は、まさに「ギルドメンバーの宣言」を体現するものでした。
今回は、その登壇内容をご紹介。ギルドメンバーの知見に触れながら、Sollective ギルドの活動とその意義を感じてもらえるとうれしいです。
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🎙黒崎 淳友:PR プランナー
テレビ報道番組ディレクター、イベント会社、PR 会社を経て独立。PRSJ 認定 PR プランナー。令和6年度中小企業支援科目合格者(中小企業経営・政策)。食品外資大手を始め SaaS スタートアップ、大手家電、インフラなど幅広く担当し、プレスリリース執筆や PR イベント実行のほか、企業と企業をつなげる PR アライアンスサービスを提供。https://www.sollective.jp/ja/freelancer/gybe
PR 本来の役割は、話題性より信頼性
「『自社の魅力を発信したい』『わが社のサービスの良さを知ってほしい』。そんなふうに自社を主語にした発信からスタートすると、うまくいかないケースが多いんです」
黒崎さんはまず冒頭で、PR 担当者が陥りやすい罠を指摘。「PR は社会を主語にすべき」という考え方を示しました。
PR は Public Relations(パブリック・リレーションズ)の略であり、組織や個人の目標達成のために、多様なステークホルダーとの信頼関係を築く活動を指します。
露出や認知の拡大が PR の目的だと思われがちですが、黒崎さんは「企業が本来目指すべきは、中長期的な売上の持続と成長のはず」だと断言。そのためには一時的な話題性よりも、長く応援してくれるファンや確固たる評判が不可欠だといいます。
「継続的な支持を得るには、自社都合の発信ではなく、社会が求める課題やニーズにどう向き合っているかを伝えることが大切。ステークホルダーが共感するのは、そうした等身大で実直な 『Why』なんです 。これが PR の本来の役割だと考えています」

なぜこの事業を?「Why」を明確にしたストーリー設計
では、この「Why」を効果的に伝えるにはどうすればよいのでしょうか。分刻みで大量のプレスリリースが投下される現在の状況では、「単に『よい製品です』と伝えるだけでは差異化が難しく、メディアの関心は得られない」と黒崎さんは話します。
その実践例として挙げたのが、福祉×アートを手掛ける「ヘラルボニー」。知的障害のある作家とライセンス契約を結んで定期収入につなげるなど、社会課題をビジネスで解決しているスタートアップです。創業者にとって起業の原体験は知的障害を伴う兄の存在であり、こうした背景をプレスリリースなどに丁寧に落とし込むことで、多くの注目と共感を集めてきました。
「ヘラルボニーのように、なぜこの事業をするのかという『Why』を明確にし、それをストーリーとして設計することが、伝わる PR 発信の第一歩です」
ただし、こうした社会課題と自社事業を結びつけた戦略的な発信には、専門性と継続的な取り組みが求められます。黒崎さんは、「そこで頼りになるのが、外部のプロ人材の存在」だと語ります。
「PR の専任を置けないリソースの限られた企業にとって、実績あるフリーランスとの協業は有効な選択肢です。第3者視点を取り入れられる点も大きなメリットです」
黒崎さん自身も企業と仕事をする際は、まず社長の考えを深く理解することから始めます。協業の初期には1か月かけて社長にじっくりインタビューを実施し、会社の思いや背景を把握。その後も継続的に情報を蓄積し、突然の取材依頼にもすぐに対応できる体制を整えているそうです。

地道に露出を重ねて、評判の「山」を構築
黒崎さんは「PR は一度話題になれば終わりではない」と続けます。「実は、メディアを一番見ているのはメディア自身です。プレス発表によって露出が露出を呼び、消費者があらゆるメディアで繰り返し目にすることで評判が作られます」。
「新製品や予算がなくてもプレス発表は可能」として黒崎さんが提案するのは、社内の会議室に数人の記者を招く小規模な勉強会です。たとえば AI 関連企業であれば、今現場で AI がどの程度人に置き換わっているのかという最新動向の解説や、AI の具体的な導入事例の共有など、「あ、それ知りたかった!」と思われる社会的関心事をテーマにした勉強会(メディアラウンドテーブル)を3か月から半年に1回程度行えば、「単に製品情報を送りつけてくるのではなく、有益な情報を提示してくれる企業」として徐々に認知され、評判につながるといいます。
「PR は基本的に『観測気球』です。まずは発信して、反応を見てから次のアプローチを考えるスモールスタートで OK。複数回に分けて仕掛けることで、成果はじわじわと現れるはずです」
また、1社単独でのリリースが難しい場合や話題の起点作りとして有効なのが、他社とのコラボレーションだといいます。
実際に黒崎さんが手掛けた施策に、製パン企業といよかん農家をつないだ「アップサイクルビール」があります。通常廃棄されるパンの耳といよかんの皮を再利用し、食品ロス削減に貢献するストーリーを軸に、試飲会イベントからメディア露出へとつなげたそうです。

実践知を社会へ-広がる Sollective ギルドの可能性
黒崎さんが一貫して伝えていたのは、「PR は社会との信頼関係を築くための営み」だということ。その根底には、「PR を正しく理解して活用する人が少しでも増えてほしい」という自身のパーパスがあるといいます。
「今回の登壇も、そうした思いを社会に届ける実践であると同時に、PR 業界そのものとの信頼関係、つまり業界の顧客とのリレーションの場でもあったと感じます」
Sollective ギルドには、今回登壇した黒崎さんのように、戦略的な視点と実践知を持ち、伝える設計を支援できるハイスキル PR フリーランスをはじめ、幅広い領域の専門家が集結しています。その知見は個人のなかに閉じ込めておくものではなく、社会や次世代に共有してこそ価値を持つもの。Sollective ギルドは、まさにその役割を担う集団でもあるのです。
フリーランスの価値をともに証明したい人は、まずこちらから「ギルドメンバーの宣言」にご賛同ください。また、ギルドの取り組みに共感し、協業に関心をお持ちの企業の皆さまからのご連絡もお待ちしています。
Writer / Shinobu Takayama
Sollective:https://www.sollective.jp/freelancer/Shinobu
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Editor / Yuna Park
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