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2026.04.07# Other

【対談】なぜ女性のハイスキル人材は少ない?機会を阻む構造と求められる支援

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3月8日の国際女性デーに際し、ソレクティブは「女性フリーランスの活躍を支える」メッセージを発信しました。

年収700万円以上のハイスキルフリーランス市場において、女性はわずか1割。この数字の背景には、経験を積む機会の不平等、育児や介護など家族のケアの集中、そして「自分を過小評価してしまう」などさまざまな「壁」が存在します。

特に注目したいのが、独立前のチャンスが制限されていたことの影響です。メッセージのなかで私たちは、自分のスキルを正当に評価して積極的にアピールすることの大切さを伝えましたが、それも経験に裏打ちされた自信があってこそ。企業にはまだまだ女性が活躍しにくい構造が残っており、女性ハイスキル人材を増やすには、こうした構造そのものに目を向け、変えていく視点が必要です。

そこで今回は、ソレクティブ共同創業者兼 CEO の岩井エリカと、企業におけるウェルビーイング向上や人的資本経営の推進を支援する Cradle(クレードル)の入澤諒さんが対談。ハイスキル人材に女性が少ない構造的な要因から、企業や周囲に求められるサポート、そして1人ひとりが挑戦できる環境づくりに必要な視点まで語り合いました。

2023年にソレクティブが実施した調査より

🎙入澤 諒(以下、入澤)
エムティーアイにてルナルナのサービス企画・マーケティングや遺伝子検査サービスの立ち上げを担当。その後、リクルートにて妊活のジェンダーギャップ解消のため、スマホで精子のセルフチェックができるサービス『Seem』を立ち上げ、プロデューサーを務める。同サービスでグッドデザイン賞 特別賞[未来づくり]、ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト 優秀賞、カンヌライオンズ モバイル部門 グランプリなど多数受賞。2020年に Cradle に参画。2021年に CPO、2023年に取締役就任。

🎙岩井エリカ(以下、エリカ)
株式会社ソレクティブ共同創業者兼 CEO。Imperial College London 工学部修士課程修了後、2010年に住友電気工業に新卒入社し新規技術の特許獲得等に貢献。その後渡米し UCLA Anderson School of Management で MBA を取得後、大手玩具メーカー Mattel, Inc. やメガベンチャー Riot Games, Inc. で HR ビジネスパートナーを務める。帰国後は Geometry Ogilvy 日本支部の人材マネジメント統括を経て、フリーランスの人事コンサルタントとして独立。2020年にウォン アレンとともに株式会社ソレクティブを設立。

機会が制限された結果、女性がキャリアの途中で消える

エリカ:私はジェンダーにとらわれずハイスキルでチャレンジしたい人々を応援したいと思って事業を展開しています。とはいえ、日本では男性の方が活躍している場面が多い。それは、女性のケイパビリティが足りないということではなく、チャンスが少なかった結果でもあります。

日本の女性の大学進学率は高いのに、キャリアの途中で急に女性が少なくなる。なぜそうなるんでしょうか?

入澤:最近の大企業では入社の時点でジェンダーによる差はほぼない一方で、日本ではまだまだかつての「一般職」と「総合職」の分断が残っているんですよね。区分を廃止する動きも出てきましたが、業界によっては「事務職(一般職)は女性のみ採用」とする企業がまだ少なくない印象です。

実際に最近出会った一般職女性は、40代でキャリアが17~18年あるのに、あとから入社した男性総合職にポジションも収入も抜かれていくと話していました。入社の時点で「女性は一般職」と決まっていたので、昇進の機会がないんです。転職しようにも、一般職としての職務経歴しかないため年収を下げるしかない。本当にスタック状態です。そういう現実もあるんだなと、衝撃でした。あとは、産休、育休の影響でキャリアが断絶してしまうのも大きいですよね。

エリカ:もちろんそれもありますが、女性が活躍しにくい原因は、出産や育児だけではないと思っています。今は結婚しない、あるいは子どもを持たない選択をしている人も増えているのに、キャリアのジェンダーギャップがありすぎる。

Sollective はハイスキルの独立人材に特化したサービスですが、男性を優遇しているわけではないにもかかわらず、登録者も案件への応募も男性が圧倒的に多いのが現実です。女性はどこにいったんだろう?って本当に思います。道を歩くと半分が女性なのに。

入澤:「ハイスキル人材を募集」と聞くと、たしかに女性が手を挙げづらいのはあるでしょうね。

勤務先での経験は、独立を含めたキャリアの選択肢を大きく左右する要素です。しかし賃金や昇進ルートのジェンダーギャップに加え、女性は雑用を頼まれやすい、男性と同じ態度でも「怖い」「感情的」と評価されやすい、「ボーイズクラブ」の蚊帳の外に置かれるといったハードルの数々によって、女性のキャリア構築が難しくなるこることも指摘されています。

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当事者と周囲の知識が、女性が活躍できる環境につながる

エリカ:制度や構造的な問題で女性がキャリアを積みにくい状況のなか、女性が挑戦し続けるためには、どんなサポートが必要だと思いますか?

入澤:働き方を大きく変えるには、(男性基準で作られた)制度そのものを見直す必要があると思うんです。ただ、大企業の場合はすぐに制度を変えるのは難しい。そこで Cradle では企業に対し、女性が働くうえで直面しやすい負担、たとえば月経や不妊治療、更年期などに関する知識を広げるコンテンツを提供し、当事者と一緒に働く同僚やマネージャーの知識を増やして少し視点を広げるお手伝いをしています。

育休から復帰する人がチームにいた場合、周囲が優しさから「大変そうだし、仕事を減らしてあげよう」と判断してしまうケースがあります。でも、家庭環境や置かれている状況は人それぞれ。不必要な配慮は、本人のためにはなりません。1人ひとりの背景や意向に沿って向き合い、それぞれに合った対応が重要です。

健康課題も家庭の事情も、当事者以外には見えにくいものです。でも全員が少しの知識を身につければ、「仕事を減らされているのでは」という本人の不安や、周りからの「早く帰れてずるい」などの誤解も生まれにくくなります

エリカ:知識がないとそもそも対応の仕方もわからないですよね。とても意味のあるサポートだと思います。

月経や更年期、不妊治療など、女性の健康課題は、仕事のパフォーマンスにも少なからず影響を与えます。経済産業省の試算によると、社会全体での経済損失は年間約3.4兆円にのぼります。

一方で、周囲の理解と適切なサポートによって、当事者のパフォーマンスが上がることもわかっています。女性特有の事情を抱える人々が自信を失わず、委縮せず力を発揮できる環境が整うことで、積める経験の量も変わってくるはずです。

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周りからの後押し&活躍する女性の可視化が大きな力に

エリカ:周囲の理解に加え、女性に機会をつくるという意味では、後押しも重要だと思っています。Sollective では、案件やプロジェクトにマッチすると感じたフリーランスに、こちらから積極的に声をかけるようにしています。「あなたのこういう経験がこの案件に合っていると思う」と具体的に伝えると、「実はやってみたいと思っていた」という反応がよく見られるんです。周りの働きかけが、挑戦のきっかけになることも多いと感じます。

入澤:声をかけたときに「やってみたかった」という反応が多いのは、女性が自分の能力を低く見積もってしまいやすい傾向があるからでしょう。事実、マネージャー職の募集に対し、男性は要件の約60%を満たせば応募する一方、女性は100%満たさないと手を挙げない、という調査結果もあります。なのでそこを考慮した評価やプッシュは必要です。

エリカ:まさにその話を今日したかったんです。おっしゃるように、世界的に男性は根性と気合で応募してくるのに対し、女性は必須以外の要件まで満たしていないと手を挙げない。私が人事の仕事をしていたときは、女性に対して「少し足りない部分はあるけれども、このポジションは十分務められる」という働きかけをしていました。今はスカウトというかたちでチャレンジを後押ししています。

入澤:女性の場合、職場でももちろんですが学校などこれまで育ってきた環境が男性優位の構造だったことが多いと思うんです。そこで男性と同じ役割を与えられてうまくいかなかったときに、「女性だから」と言われた経験が少なからずあるでしょう。その積み重ねで、自信を持ちづらくなってしまう。

だからこそ、外からの働きかけが重要です。「あなたはできる」「期待している」と積極的に伝え、チャレンジ後にしっかりサポートすること。そして実際に活躍している人が男女同じぐらいの割合になる環境があれば、結構変わってくると思います。

エリカ:一方で、「女性活躍」を推したいがために、女性を登用することが目的になるのは避けたいですね。本当に望むのは、「数合わせで登用される」世界ではなく「能力がフェアに評価される環境」です。なので、Sollective ではその方のケイパビリティ、バックグラウンド、スキルセットをフェアに見極めて、いちプロフェッショナルとして活躍できる場の提供をどんどん促進していきたいと考えています。

入澤:男性が女性活躍と聞くと、自分とは関係ないというか、「女性のため」の取り組みと思いがちです。でも、インクルーシブな働きやすさの観点で考えると、女性だけの問題ではないはず。女性が働きやすくなると、男性にとっても働きやすい環境につながります。みんなが「自分ごと」として考えられるといいですよね。

エリカ:最終的には「人」だと思うんです。それぞれが働きやすい柔軟な環境は、どのジェンダーによってもベストになるはず。そういうオープンな考え方で、誰もが自分の力を正当に評価され、挑戦できる環境をつくっていければと思います。

家や学校で誰かのケアまたはサポート役を任せられることが多かったり、つつましさを求められたり、活躍するビジネスパーソンの姿として目にするのがほとんど男性だったり。こうした社会で大人になった女性たちが「男性のルール」のなかで働くための適切な後押しがあれば、活躍できる範囲が広がり、やがて独立して力を発揮することも現実的に考えられるのではないでしょうか。

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